【連載コラム】20年後の地域戦略を考える


Vol.19
黒い牛乳

2010.03.03 金子照美(2030.jp編集室 NPO田園社会プロジェクト理事長)
コメント(6)件

V・シヴァ『食糧テロリズム』という本を読んで、年甲斐もなく血が逆流しました。
前回書いた「1万円札のオークション」は行き着くところまで行っているようです。

同書は、特にインドや東南アジアを舞台にした「緑の革命」(農業)、「青の革命」(漁業)、牧畜業の「白い革命」(いずれも先進国の巨大アグリビジネスが仕組んだもの)の実体を取り上げ、これらのグローバル・ビジネスがいかに現地の国々を飢えさせ、生態系を破壊し、農民や漁民の生命を奪ってきたかを具体的な数値を挙げて暴き出しています。

「緑の革命」では、遺伝子組み換えで独占的に販売する種、種とセットになった農薬や化学肥料を使わせることで、地元の生態系を完全に破壊し、農民を借金漬けにしてきたこと。

「青の革命」では、同書から引用すると「地球規模の漁獲量は過去40年の間に4倍に増大した。このような大量の収穫は工業的漁船団の爆発的増加によって可能になった。毎年350万kmもの合成魚網を使用しているが、これは地球88周する長さに当たる」。
地球を88周する長さの流し網で海の魚を一網打尽。しかも、この漁獲で約半分の魚が商品にならず、死んだまま廃棄されているそうです。
また、恐ろしいことに、魚にも遺伝子組み換え技術が導入され、すでに、1年ちょっとで成長するサーモン(通常は3年必要)を創りだしているとのこと。

著者はこうした農・漁業ビジネスを「やり逃げ産業」と呼んでいます。インドでは1993年から10年間で農民の自殺が10万人を超えたそうですから確かに「テロ」に近い。しかし、テロリズムは何らかの政治的主張を伴なう暴力ですが、この場合の動機は金儲けだけ。

日本の魚の消費量は世界一ですが、昨今、買い負けが話題となっています。BSEなどの影響で魚の需要が増した欧米、消費量が拡大している中国などに買い負けているとのこと。

皆さんは中国の上流階級に属する人がいったい何人ほどいるかご存知ですか?
私も最近知ったばかりなのですが、その数は1億5000万人。日本の総人口よりも多い。
近年の経済成長ぶりからすると、この数は2倍にも3倍にも膨らむでしょう。
こうした上流階級を狙った「やり逃げ産業」は今後とも増え続けるに違いありません。

「白い革命」(牧畜業)も、出るのはため息ばかり。
現在、アメリカでは約30%の牛がソマトロフィン(成長促進剤)などのホルモン剤が投入され、乳量を飛躍的に伸ばしているとのこと。
BSE騒動ではイギリスは370万頭の牛が焼却処分にされました。草食動物の牛に肉骨粉を与える。ありていに言えばムチャクチャ。目的のためなら手段を選ばず。
他にも様々な薬剤が投入されているそうです。
同書によれば、鶏もまた抗生物質、砒素化合物、サルファ剤、ホルモン、染色料、ニトロフラン剤といった薬品からなる「現在的な」食事で育てているそうです(有機栽培では牛糞や鶏糞を良く使いますが、こうした排泄物を使っても大丈夫なのでしょうか?)。

日本の酪農はどうなのか?・・・中洞正著『黒い牛乳』という本によれば、現在の酪農は乳脂肪率3.5%以上を基本としており、各乳業メーカーは3.8、4.2といった成分の濃い牛乳が主流になっているとのこと。
しかし、牧草だけの飼料では3.5%以上を満たすことが難しく、酪農家は北海道のような広大な牧場でも放牧を止めざるを得ず、狭い牛舎で満飼いにし、何が混入されているかも分らないアメリカ輸入の濃厚飼料を使わなければならない。
仔牛は生まれてすぐに人工飼料で育てられ、牛舎から一生外に出ることもなく、搾乳の邪魔になる角や尻尾まで切られて、抗生物質や栄養サプリメントを与えられ、病気を防ぐ薬漬けとなっている。
そして、酪農家は働けど働けど、借金が膨らむばかり・・・。どうもビジネスの構造はインドと似てなくもない。

経済学者のヴェブレンは「ビジネスはインダストリーを駆逐する」と書きましたが、この分だとインダストリーどころか、地球も人間も死に追いやってしまいそうです。

しかし、希望は持ち続けたい。
『黒い牛乳』の筆者の中洞さんは、アメリカ式酪農ではなくアルプス式の山地酪農を自ら実践し、全国に広めようと活動しています。
牛は人間が考えるよりはるかに丈夫で賢いらしく、山へ放牧すればどんな急斜面でも平気、どんどん山奥まで食糧を得にゆき、マイナス30度の厳寒にも耐えるそうです。
その結果、放牧した山は、表土の流出を防ぐ最適の作物である野芝の見事な草原に変わる。

国土の6割を占める山林の荒廃は本当に深刻な課題です。
金もかからず、牛の世話もなくなり、BSEや薬害の不安から解放され、美味しい乳を生み出す「楽農」(同書より)。これが山林の荒廃を防ぐとしたら、なんと素晴らしいことか。

ちょっと今回は書評のようになってしまいますが、行政やJAの厚い壁を乗り越えて独自のミルクプラントを立ち上げるに至った中洞さんの闘いの記録『黒い牛乳』は、近年まれに見る良書と言うべきでしょう。



<ご感想をお寄せください!>



最近貴会のご活動を知り、メルマガを拝読させていただいております。
素晴らしいご活動をされていらっしゃり、感銘を受けております。ありがとうございます。

今回の『黒い牛乳』につきましてのコラムについて、少し存じあげていることがありますのでメールをさせていただきました。

中洞さんですが、今中洞牧場はありません。素晴らしい理念をもたれた方ですが、経営面・資金面で色々と大変なことがあり、経営者が変わり今はしあわせ牧場という名で中洞さんは名前は残られていますが、実質は経営から大きく外されてしまいました。

乳業業界は、多くが大手で占められ大変です。下記のQ&Aに少し詳しく書かれていますので、もし宜しければご一読いただければ幸いです。

http://www.saitou-bokujo.org/q&a/q&a.html

自然放牧は理念は素晴らしいのですが、今の日本では反対勢力やお金の流れに関して大変厳しい現実があります。正しい方向に進んでいっていただきたいものです。

それでは今後とも応援しています。宜しくお願いします。

北海道在住者より

2010/03/04 11:08

脂肪分の低い牛乳の普及に努めてはどうでしょう。

2010/03/04 10:34

一つよろしいでしょうか。


牛の角を焼く(切る)のは搾乳の邪魔だからというより、
私たちや他の牛が怪我しないように、最悪死なないようにするためですし、
牛によっては伸ばしつづけてそのまま牛自身の目に刺さる事もあるからです。

牛だって生き物ですから、ここによって性格も違いますし、発情で暴れる時もあります。
暴れられて自分たちや他の牛に怪我を負わされたり、骨を折られたり、
殺されたりしたら、たまったものではありません。
なので、あくまで角を焼くのは、自分たちや牛たち自身を守るためでもあります。


それと細かいことを申しますと、生まれたばかりの仔牛は初乳もちゃんと与えます。
初乳を飲ませないと病気などへの抗体を取り込むことができないからです。


飼料に関しては各農家さんでやってる物が違うのであまり強くは言えませんが、
私の実家ではサプリメントをやったとしても、カルシウムやビタミン位だったと思いました。
牛は殆ど乳を出してる訳ですから、カルシウムなどはどんどん出される訳ですし、
カルシウム不足などで起立不全などになると、乳も絞れないので
(言い方はよろしくないですが)廃棄ということにもなってしまいます。

余談になりますが、私の実家では
発酵させた牧草(サイレージといいます。)
ビートコーン(飼料用のとうもろこしを潰して焼いた物)
ビートパルプ(甜菜の絞りかすをパルプ状にしたもの)
アレギット(昆布の粉末)
その他穀物や牧草をパルプ状にしたものや、若干のサプリメントを
季節や牛の体調によって分け与えてます。


最後に、牛にはカビ以外の原因の病気に対して抗生物質等を投与することもありますが、
抗生物質がちゃんと体内から消えたかどうかを、
特定の検査機関にサンプルの牛乳を持っていって検査してもらい、
ちゃんと体内からなくなったのを確認してから出荷してます。

少々言い訳の様に感じられたかもしれませんが、
我々酪農家(といっても私の実家の話が殆どでしたが)は
以上のような理由で、角を焼いたり、飼料にサプリメントを加えたり
頭の隅に置いていただけるだけでも幸いです。


P.S.
ちなみに、北海道の牛乳は殆ど加工乳にされて
皆様のお手元に届いているとおもいます。

実家が尻尾も切りませんし、放牧もさせていたからだとは思いますが、
私も尻尾を切ったりするのはあまり好きではないですし、
放牧させないのも良くないと思います。

現在、実家を出てプログラマになるために専門学校に通っている身なので、
最近の酪農や他の農家さんについてはなかなか分かりませんが、
酪農家の息子の一人としては、牛にも人にもやさしい酪農をしていれば
いい食品はきっとできると思っております。
(なかなかそうはいきませんが、主に経済面で)

以上、駄文長文ですが、
家業を継がないでプログラマになろうとしている身が偉そうに申して
申し訳ございませんでした。

2010/03/03 21:38

先日「いのちの食べ方(原題:our daily bread)」という映画を見ました。
ナレーションなしの退屈な映画ですが、我々が普段どんなものを食べているのか改めて知らされました。
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

超コレステロール過多の肥満メタボ牛の牛乳って確かにそう考えるだけで嫌ですよね。
昔、山梨のペンションに泊まった時に朝飲んだ、搾りたての牛乳の味を思い出しました。
あれ以上に美味しい牛乳ってあれから飲んでないなぁ~。

2010/03/03 18:18

北海道の広大な大地を有効活用するためにもまた、環境保全のためにもこのような流れになれば良いですね。
また、飼料高騰の影響もあり、田畑輪かん体制から、デントコーンを作付けし、それを牛の飼料とする試みも行なわれています。うしやさんのメリットは、近場で良質な飼料が手に入る、水田農家のメリットは、遊休農地の活用と圃場(土)の排水性、保水性が良くなるなどがあげられます。これを‘耕畜連携’といいます。

2010/03/03 16:16

内容がマイナス過ぎるために印象が悪いです。
ユーモアもありませんから、読むだけで気持ちが沈んでしまいます。
もっと違う書き方があるのでは?

2010/03/03 15:46

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