【連載コラム】20年後の地域戦略を考える


Vol.13
消費者ニーズ

2010.01.13 金子照美(2030.jp編集室 NPO田園社会プロジェクト理事長)
コメント(8)件

今年の正月のセールでは、某デパートで1足1000円のブーツが売られていて驚きました。
そういえば、去年は1本1000円を切るジーンズが出て話題となりましたね。
某社の980円を皮切りに、880円、850円と各社が競い、遂に690円のジーンズまで登場。
年末には99円のセーター(新品)まで出たそうです。
いったいこの安売り競争、どこまで続くのでしょうか?

服飾デザイナーの川久保玲さんが某新聞で
「1000円以下のジーンズなんてありえない。どこかで誰かが泣いているはずだ」
という趣旨のことを書いていました。
ちなみに、これらの激安ジーンズは中国製の生地、
縫製はカンボジア、バングラディッシュなどらしい。

日本は、映画『ああ野麦峠』で描かれたような女工哀史の時代を持っています。
明治から昭和の初期まで、製糸工場に勤める女工たちは、
想像を絶するような過酷な条件下で1日12時間、時には17時間も働かされました。
当時の記録(細井和喜蔵著『女工哀史』)によれば、
72万人の女工のうち毎年1万6千人が過労や病気で死亡していたとのこと。

現代は、「野麦峠」がバングラディッシュなどに移っただけなのかもしれません
(4年ほど前ですが、中国でiPodを作っている工場を現代版「女工哀史」として英紙が報道しています。)

安売りといえば、スーパーは以前から激しい価格競争を展開しています。
ほとんどの消費者は1円でも安いものを選びます。
スーパーではこれを「消費者ニーズ」と呼んでいるそうです。
この「消費者ニーズ」に対応できる店だけが生き残るというわけで、
1円でも安く食料品を仕入れる競争が始まる。
農家はこの「消費者ニーズ」に応えるため激烈な生産競争を強いられることとなる。
窒素肥料を多用し、短期間で大量に作る。
ある本によると、こうした窒素過多のメタボ野菜は健康には良くないばかりか、
幼児には危険ですらあると載っていました。
しかし、そうしないと地方の農家は生き残れない。
その競争についてゆけない農家は農業をやめるしかない。

スーパーの特売品の価格は2週間前から決まっているとも聞きます。
「さんま99円!」というチラシがすでにできていて、
それからバイヤーが全国の漁協と話をつけるらしい。

皮肉な見方をすれば、食の安全・安心の崩壊は、消費者ニーズが招いたとも言えます。
食という字は「人」に「良」と書きますが、
今の「食」をめぐる現状は、果たして人に良いかどうか・・・。

宅配便の競争も同じです。かつては1500円以上した通常の宅配便が
今は名古屋から東京まで340円、九州でも700円で送れます。
北海道の産物がわずか1日で届く便利さ。
しかし、トラック運転手の労働条件は「野麦峠」以上です。
1日15時間、休みも休日もなし。高速の事故は後を絶ちません。
某社では「常に、歩かずに走れ」が社訓とも・・・。

いずれにせよ、こうした激安価格の氾濫の影で「誰かが泣いている」のは確かなようです。
消費者にとって価格が安いのは歓迎すべきことですが、
その影で農家が泣き、漁師が泣き、トラックの運転手が泣く。
企業はコストを極端に削減し、給料も雇用も控え、経済は停滞します。
そうなると、巡りめぐって最後に泣くのは他ならぬ消費者になるはずです。

さて、この悪循環の元とも思える「消費者ニーズ」は、
本当に消費者が望んでいることなのでしょうか?

私もこの正月の間、家内の買い物につき合いました。
案の定、魚はこの店、野菜はこの店と3軒ほど車で回らされました。
確かに10数円の価格差があり、それはそれで賢い主婦の行動なのでしょうが、
回るのに要したガソリン代を思うと少し可笑しくなります。
あげく、彼女は買い物に疲れたからと喫茶店に寄りケーキを注文したのです。

消費者ニーズ・・・。私には、主婦は価格競争に踊らされているだけで、
「企業が生き残るためのニーズ」ではないかと思えてならないのです。



<ご感想をお寄せください!>



プライベートブランドの躍進により、経営が悪化した食料品メーカーで働くパートのオバサンが、それでも安いプライベートブランドを買ってしまうという話をテレビで見ました。この状態では良くなるはずがありません。

2010/01/19 18:09

女工哀歌(エレジー)という映画を去年見ました。
中国のジーンズ工場で過酷労働を課せられている少女たちの話ですが、
今のデフレ戦線(?)に突入している日本の取引先なんかは、同じような状況になってるのかなぁ~。
とニュースを見るたびに思い出します。

ご参考までに。
http://www.espace-sarou.co.jp/jokou/index2.html
(映画の演出はかなりいやらしいので、面白いかどうかは解りませんが。事実として)

2010/01/19 09:46

そう思う

2010/01/18 13:25

消費者も生産者の事を考えて買い物をするべきだと思います。
「安くっても売れない」「良いものが売れる」そんな賢い消費者が増えて欲しいです。
でも、まがい物がウンチクだけを付けて高く売っているものもあるので、
チェックするのが難しい場合もあると思いますが・・・。

2010/01/18 09:42

先日札幌の「まるやま市場」という、老舗の公設市場が閉鎖となり、常連と思われる人達にインタビューをしていました。
あるやさいやに来た客は、「品物の値段が安いか高いかで来ているのではない」「この店の信用と安心を買いに来ているのだ」と、云っていました。
また、永年、定期宅配してもらっている客たちは「店を信頼しているので、実物を見なくても何も心配はしない。」と、云っていました。

2010/01/15 09:42

まさご指摘のとおりです。
悪貨は良貨を駆逐する。負のスパイラルをどこかで止めないと!
何のために私たちは働いているのでしょうかね。
新しい経済学、人間の尊厳と幸せを追及する経済学の登場が待たれます。

2010/01/14 13:51

そう思う。
健康の為にも、私たちの環境を守るためにも、そして、平和のためにも。

2010/01/14 12:55

サラリーマンの給料が年々下落する時代ですから、昭和の時代では考えられなかったです。
物は何でも安ければよいのでしょうかね。(多くの人は物の安さに非常に敏感になってきていると思います)
生産する人たちの思いや労力もありますよね。
『消費者ニーズ』おっしゃる通りと思います。

2010/01/14 11:39

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