【連載コラム】20年後の地域戦略を考える


Vol.4
街の財産

2009.10.28 金子照美(2030.jp編集室 NPO田園社会プロジェクト理事長)
コメント(8)件

地方へ旅行するとまだ珍しい地場の産物に出会えます。
しかし、数十年間でその数はうんと少なくなってきました。
つまり、日本中の食生活が均一化されてきたわけです。

食生活ばかりではありません。住宅もそうです。
かつて地方には独自の建築様式があり、その地ならではの集落景観が見られたものです。
北海道では厳寒や豪雪に耐えうる家が建ち並んでいたし、沖縄では酷暑や台風を防ぐ
伝統的な平屋屋敷が並んでいました。南部(岩手県)の曲家、武蔵野の兜造り、
北陸地方の中門造り、白川郷の合掌造り、有明海沿岸のくど造り・・・。

どこへ行ってもその土地土地の気候風土に合わせた家並みを見せており、
百年の風雪に耐えて古さびた風格の漂う集落景観を見るのが旅先での大きな愉しみでした。

しかし、今は全国どこへ行っても家はほとんど同じ。
ひと昔前、「文化住宅」という意味不明の洋式住宅(関西では2階建集合住宅)が
広がりましたが、住宅の均一化に拍車をかけたのは、なんと言っても建売住宅でしょう。
今では、根室の家と那覇の家ですら同じような建売住宅が並んでいます。
それを可能にしたのは住宅メーカーと冷暖房の発達です。

ハウスメーカーは量産体制ですから建築費が安い。
家の壁が薄かろうが窓が広かろうが冷暖房が使える。
つまり、気候風土も関係なくメーカーは存分に安くてお洒落な家を建てられる。
売れないはずはありません。特に若い世代には大人気。かくして日本全国の家が、
おしなべて都会風の簡便かつ近代的「文化住宅」へと変貌していったというわけです。

では、地元の腕利きの大工さんはどうなったのでしょう?

部材は安い外国産の木材を使って住宅会社の工場で作ります。
デザインも構造もメーカー指定、現場は経験よりもマニュアルどおり組み立てる技術が
あればいいので新米の大工でも間に合います。
熟練大工の経験や知識はかえって邪魔になる。左官屋さん指物師も仕事が少なくなりました。

最盛期に120万人いたという日本の大工さんは、平成元年頃は100万人を切り、
現在では50万人を切っているそうです。
仕事を失った大工さんの多くは都会へ出稼ぎに出るしかない。
親方の元で若い頃から修行を積み、地域の気候風土や樹木の生態まで知り尽くした
プロの大工さんも、都会へ出れば1時間いくらの単純労働ばかり。
いなくなったのは大工さんだけではありません。村の加治屋さんもいなくなって久しい。
自転車屋、電気屋、魚屋、豆腐屋、おもちゃ屋、駄菓子屋、文房具屋、本屋・・・、
どこの田舎町でも必ずあったこうした小さな店舗はほとんど廃れ、
大都市からやってきた百貨店や大手スーパー、ホームセンターなどが
巨大で華々しい広告看板を掲げています。

都市化される(都市の資本が入る)ということは、いったい地元にとって得なのでしょうか、
損なのでしょうか?

近年、地元の木材を使った地元の住宅メーカーもでてきました。
大きな拍手を送りたい気分です。

「街の財産でもある」というのは某ハウスメーカーのCMですが、大工さんも左官屋さんも、
自転車屋、電気屋、魚屋、豆腐屋、おもちゃ屋、駄菓子屋、文房具屋、本屋の皆さんも、
地元の山や川と同じく、私には全部「街の財産」だったように思えるのです。



<ご感想をお寄せください!>



そうなんです、職人さん大工さんがいないんです。
一級建築士が10人いても家は建たないんです。

○○士がいっばいいて、それを管理する人がまたいて、
ピラミッドが壊れています。

2009/12/11 16:15

男の子に人気のある職業に、大工さんが1位になった年がありましたが、最近のものを10位まで見てみても「職人」と呼べる職業がほとんどありません。そのなかでも大工さんは5位くらいで健闘してました。
別の調査で、子供の頃なりたかった職業に就けた大人は7人にひとりだとか。
もちろん子供のときになりたい職業は漠然としているとは思いますが、生活に密着した様々な職人の技を地域に必要な「財産」ととらえなおして、人気の職業になればいいなぁなどと漠然と思います。

2009/11/05 10:21

たぶん・・・人口構成比というものと都会と田舎の人口バランスが大きく変わってしまったことも原因の一つだと思います。
田舎の少子高齢化や限界集落の話題は昔からありますがもう既に加速的にお年寄りたちの死別が始まっています。
構成比率は一見良くなりそうですが、全体数が急に小さくなりまたその地域の昔の文化や技能の伝承が不可能になります。
これもまた農業とともに待ったなしの状態です。
おじいちゃんおばあちゃんは大工であり料理人であり、森や海の食料調達人でもあるのです。

2009/11/04 23:23

その傾向は感じますが色々な手間を考えると、割高になっても手間がかからず任せやすい所に依頼するのは仕方が無いのでは。私は常日頃から自分が生きて行く上で100人の力が必要ならば、自分は101人以上の働きをしないと社会の向上は無いと子供に言っています。自分で出来る範囲の事は自分でするようにしています。本当に良いものは必ず残っていくと思います。

2009/10/30 23:11

奥さんの実家の木を使い,家を建てて10年経ちますが,木の収縮で隙間が多く冬は寒いですが,暑い夏に家に換えると涼しく感じます。
昔の家は,季節感があったと思いますが,地元産の木材で建てられている家を見ますが,壁・床は新建材等が使われています。昔はあった大黒柱が少なくなりなんだかさびしい思いがします。

健康志向・エコ志向が増えてきていますので,地元の材料を全て使用したエコの家が今後見直されて増えて来ることを期待したいと思います。

2009/10/30 08:11

私の住む、鹿児島県姶良地区は、豊かな田園風景が美しいのですが、農家の殆どが後期高齢者です、10年後はどうなっているのか?
心配でなりません。

2009/10/29 09:37

私の住んでいるところは家が点在している散居村で有名な富山県の砺波平野のど真ん中にあります。家の造りはこの地方で伝統的家屋である「吾妻造り」と呼ばれるものです。今回のコラムを読んで「やっぱりそうだよなぁ」と同感しました。築年数はかなり経っており当然エアコンは1台もありません。しかし、家の造りは豪雪など地域の気候や風土と向き合ったものとなっているため長持ちしています。これは厳しい気候や風土とうまく付き合えるよう先人達の工夫と努力の賜物なのでしょうね。これが伝承されずに廃れていくのが残念です。これを少しでも食い止めるためには伝統的家屋が持つ素晴らしい要素をもっとアピールしていく必要があるのではないでしょうか。

2009/10/29 09:23

「街の財産」を読ませていただいて、懐かしい景色を思い出しました。
世界中の先進国が20世紀の資本主義で突っ走って来た結果地球破壊に到達してしまいましたね。
やっと気づいた今、この取り組みによって沢山の人たちで考えていく機会ができるのはすばらしいことだと思います。

きっと、懐かしい昔ばかりが良かった訳ではなく現在の方が良いことも沢山あるはずです。
地震に強くなった家、台風で破壊されない堤防、病気を治す医学、素早い情報などなど。

ただ地球の健康を回復すべく、みんなで知恵をしぼらなければいけないと、つくづく思いますね。
そして、この人のつながりが現在の財産ではないでしょうか?

2009/10/28 20:01

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